廃業・閉店へのステップ別準備と優先順位
会社(法人)を廃業・閉店する際には、大きく分けて「解散」と「清算」の手続きが必要 です。解散とは、会社の営業を停止し、廃業のための清算手続きを始める前の段階を指します。会社を清算し、消滅させるための開始地点 ともいえるでしょう。一方、清算とは、これまで会社が積み上げてきた資産と負債を整理し、最終的に双方をゼロの状態にすることを指します 。
この記事では、廃業手続きの一連の流れとその詳細について解説します。郡山市をはじめ、福島県内で廃業・閉店を考えている中小企業経営者の方はぜひ参考にしてください。
廃業手続きの流れ
経営していた会社を廃業・閉店するには、前述の通り、まず会社を解散し、その後に清算手続きを行って法的に会社を消滅させます。ここでは、廃業手続きの流れを解説していきます。
1.営業終了日を決め、営業を終了
まずは営業終了日を決め、取引先や関係先へ廃業・閉店する旨を主に書面で伝えます。営業終了日は自由に決めてよいのですが、さまざまな手続きが必要になるため、数カ月先を目安に設定するケースが多いでしょう。
また、売掛金の回収や買掛金の支払い、廃業に関連した債務の弁済などに関しても、時期や方法などを具体的に話し合い、従業員への通知もタイミングを見て行います。従業員の解雇が必要な場合は必要な書類をそろえ、退職金の支払いや転職先の紹介なども可能なら行いましょう。
2.株主総会での解散決議・清算人の選任
営業終了日を決定したら、株主総会を開き、解散決議と清算人の選任を行います。清算人とは清算事務を行う者で、一般的に代表取締役が 務めます。
なお、会社法では、解散決議をした段階では会社は消滅しません。解散決議後、清算手続きを始めた会社は「清算株式会社」「清算中の会社」などと呼ばれ、清算の目的に限定した範囲内で法人格を持ちます 。
3.解散登記・清算人選任の登記
ここから清算事務が始まります 。解散決議後、清算人を選任したら、解散登記と清算人選任の登記を行います。なお、解散登記および清算人選任登記は、解散決議を得た日から2週間以内に管轄の法務局にて 行ってください。その他にも、各種公共機関に税務や雇用保険、社会保険、労働保険などに関する届出を行う 必要があります。
4.債権者への官報公告
会社に債務が残っている場合、債権者を保護する必要があります。債権者からの申し出を受け付けるために、会社の解散後は速やかに官報へ解散したことを公告しましょう。
公告期間は2カ月以上設け、会社で認識していなかった債権者も異議を申し立てられるようにします。会社が認識している債権者へは個別に催告を行いましょう。
公告で定めた債権申出期間が過ぎたら、債権者に債務を弁済し、残った財産を株主に分配します。
5.解散日までの決算承認・解散確定申告
清算人は、会社の財産状況を確認し、財産目録と貸借対照表に内容をまとめます。これらの書類を株主総会に提出し、承認が得られたら、清算結了登記が終わるまで清算人が書類を保管しましょう。
そして解散から2ヶ月以内に解散事業年度の確定申告を行います。なお、会社を廃業する際は、「解散事業年度の確定申告」と「清算事業年度の確定申告」の2種類の確定申告が必要です。清算事業年度の確定申告は、残余財産の確定日の翌日から1ヶ月以内に行ないます。
6.資産・負債の整理
債権者への公告期間から2カ月以上が経過したら、資産と負債を整理し、取引先や関係者への対応を行います。換金できる資産には、売掛金や有価証券、保険、在庫、預け金・保証金、不動産、知的資産などがあります。代金の支払いが遅れる可能性がある場合には事前に伝えるなど、真摯な対応を心がけましょう。
7.残余財産の確定・分配
資産と負債を整理して最終的に残余財産が発生したら、配当として株主に分配します。なお、残余財産が資本金を超えると、高額の課税がなされます。残余財産が多い場合は税理士などに相談し、退職金の支給や清算期間の役員報酬などの節税対策を検討しましょう。
8.清算確定申告と決算承認
残余財産が確定したら、残余財産の確定日の翌日から1カ月以内に、清算確定申告 を行いましょう。この清算確定申告が、会社として最後の確定申告です。ただし、清算作業が1年を超える場合、年度ごとに確定申告を行う必要があります 。
清算確定申告が完了したら、清算人は決算報告書を作成し、株主総会で承認を得ましょう。
9.清算結了登記
清算確定申告と決算報告書の承認を得たら、清算人は清算結了登記の手続きを行います。清算結了登記は、8. の決算報告書が株主総会で承認されてから2週間以内に行いましょう。
ここまでで廃業手続きが終了し、法的に会社が消滅します。
廃業手続きを始める前に
ここからは、会社の廃業手続きを始める前に知っておきたいポイントについて解説します。
1.廃業以外の選択肢も検討する
会社の経営をやめる場合、廃業・閉店以外にもM&Aや親族・従業員への事業承継などいくつかの選択肢があります。廃業・閉店すると会社はなくなってしまいますが、M&Aなどほかの方法なら、他者に経営を引き継いでもらうことで会社を存続させることが可能です。
廃業を検討している経営者の方は一度、弁護士や税理士、不動産コンサルタントなど各分野の専門家や、専門家が集結している民間会社・機関の支援を受けて、廃業・閉店以外の選択肢を検討してみることをおすすめします 。
2.利用可能な廃業支援を探す
会社を廃業・閉店する際には、債務超過により倒産となることがないよう、計画的に事業を終了することが重要です。経営者は誰にも相談せずに廃業手続きを進めがちですが、専門家の支援を受ければ必要な書類から廃業後の生活まで多くのことを相談でき安心です。
3.廃業手続きに必要な費用を確認する
廃業・閉店の際には、登記・法手続きにかかる費用、税金、設備などの処分費用、物件の原状回復にかかる費用など、さまざまな費用が発生します。廃業を検討している経営者の方は、事前に必要な費用を大まかに確認しておくとよいでしょう。
まとめ
会社(法人)の廃業は、大きく分けて「解散」と「清算」の2つのステップを踏んで行います。まずは営業終了日を決めて営業を終了し、株主総会で解散決議を行い、清算人を選任して、解散登記・清算人選任登記を行いましょう。
次に、債権者へ官報公告を2カ月以上の期間を設けて行い、資産・負債を整理して残余財産の確定・分配をします。その後、残余財産の確定日から1カ月以内に清算確定申告を行い、決算報告書を作成して株主総会で承認を得たら、清算人は2週間以内に清算結了登記の手続きを行いましょう。これで廃業手続きは完了し、会社が法的に消滅します。
法人の廃業手続きは複雑なため、専門家の支援を受けて進めることをおすすめします。郡山市をはじめ、福島県内で廃業を検討している中小企業経営者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。